―――――――………

「はあっ、はあ、はあ」

頭を抱え込み、私は体中から大量の汗を流していた。
呼吸が整えられない。

苦しい。
呼吸ってどうやってしてた?
わからない。
酸素が薄く感じる。


一気に思い出したその過去は、忘れていたんじゃなく、消し去っていたものだ。

五歳の私には、きっと耐えられるモノではなかったんだ。


≪思い出した?≫

響く声。
カンナの顔は見えないのに、何故か彼女が微笑んでいるように感じた。

≪あんたはアタシ達に全ての苦悩を押しつけた。
その苦悩から逃れるためだけにアタシ達は生まれたんだ≫


もう、止めて…。
もう、…お願いだから。



「や、やだーーーーーーー!!!!」


その瞬間、私はふっと意識を手放した。
肩をぽんと、叩かれたような気がした。


その人が、カンナだってこともわかってる。

でも、私…もう、何も思い出したくない。
義父が、怖かったわけ。
思い出した。


思い出したくなかった…。