いつから草野は心君って呼べばあやめだと思う様になった?
いつから草野は草野君って呼べば殺樹だと思う様になった?
―――――――いつから?
こんな真夜中に電話をいきなりかけて来て、不思議には思わなかった?
携帯で時計を確認すると、殺樹はゆらりと立ち上がった。
窓を開けると、そっと自分の部屋から出る。
あの日から、両親は寝室を別にしていた。
それが、殺樹にとっては好都合だった。
だって、一人の時を狙える。
ドアノブをキィっと捻る。
静かに中に入ると、目的の人物を見付けて口角をゆっくりと上げた。
規則的に動く布団を捲り上げて、中で眠る人物の肩を揺らした。
「……お義父さん」
小声で呼び掛けると、そいつはぴくりと反応する。
それから、薄らと目を開けて起こした人物を確認した。
「……あやめ」
ぞわりとした。
その、低い声も、どうしようもない程の憎い声も。
全てが終わるのかもしれないと思ったら、笑みさえ零れた。



