多重人格者【完結】

「……あ、やめ?」



俺はあやめの前にしゃがみ込むと、目線を合わせる。
だけど、その瞳に俺を映す事はない。


「……名前は?」


姉ちゃんの前だったけど、もう隠せないと思った。
だから、そう尋ねる。


あやめの瞳が、ゆらっと少しだけ揺れた様な気がした。



「………アン」


アン?
初めて聞く名前だ。



「ちょっと、アンって何?あやめちゃんじゃないの?心、どういう事?」

「…姉ちゃん、後で説明するから、ちょっと二人きりにさせて」

「……わかった」



まだ何か言いたそうな姉ちゃんは渋々といった様子で、寝室へと入って行く。
それを確認した後、俺はアンと名乗ったあやめに話しかける。