多重人格者【完結】

「行って来る。…何かあったらすぐに連絡して」



どちらかと言えば、姉ちゃんに云う様に。


だけど、姉ちゃんはカラっと笑って


「やあだ、何もないって!過保護ね、心は。ね、あやめちゃん」


なんて、違う解釈をしている。



あやめはただ、ニッコリと笑うだけ。


「ほらほら、早く行った行った!お金はこれね」

「……わかった」



玄関まで見送る姉ちゃんの腕を一度掴む。


「本当に、何かあったら連絡して」


今度は姉ちゃんに対して、真っ直ぐに云った。
だけど、姉ちゃんは茶化す様に笑う。


「はいはい。心は心配性ね」

「行って来ます」


ちらっと殺樹を見ると相変わらず、笑みを浮かべたままだ。
それに舌打ちしてしまいたい衝動に駆られる。


姉ちゃんの手前、睨む事も出来ず俺は黙ったまま踵を返すと玄関を飛び出した。