多重人格者【完結】



ぴたりと足を止めると、殺樹がくるっと振り向く。
それから、目を細めると。


「奈乃香さんって、とっても綺麗だね」


そう言った。


それに背筋がゾクリとした。


姉ちゃんの家に連れて行ったのは。
間違いだっただろうか。


強引にでも、俺の家に連れて行けばよかったのか。



「……どういう意味だよ」

「他意はないよ?綺麗だねって褒めただけ。
いやだな、草野君は。怖い顔しちゃって」

「お前、何かしたら許さねえぞ」

「何かって…何?」


殺樹は体の後ろに手を回すと、口角を上げた。


それから。


「……例えば殺しちゃうとか?」


そうやって、楽しそうに言ったんだ。




「っ!!」


その言い方に息を呑む。


「クスクス」

「……」


ギリギリと奥歯を噛み締めながら、目の前でさも愉快そうに笑う殺樹を睨む。
殺樹が俺の視線に気付き、顔を緩ませると続けた。