葉月ちゃんを見送り、姉ちゃんの家の方角へと進む。
何も喋らないあやめ。

うんともすんとも言わないだけじゃない。

ぴくりとも表情を変えない。


「あやめ?」

「……」


至って無表情。
だから、俺は静かな口調で隣にいるあやめへと尋ねる。


「……それとも、殺樹?」

「……」


あやめの眉がぴくっとした。
それから、ゆっくりと俺に視線を移すとニヤリと笑った。


「何かな?草野君」

「……やっぱり殺樹なのか?」

「そうだと言ったらどうする?」

「あやめは……無事なのか?」

「それを答える義理も教える義務もないけど」



淡々と話すその言い方。
何て言えばいいんだろうか。


その口調には一切の温度がない。


冷たい、そう表すべきか。


顔には薄らと笑みを浮かべているというのに。