葉月ちゃんも一緒に頭を下げて、挨拶している。

本当なら俺が頭を下げなくちゃいけないんだけど。
それが出来なくて、申し訳ないと思う。


母親に笑顔で手を振ると、あやめと葉月ちゃんがこっちにやって来た。


黙ったまま、目だけで合図すると三人並んで歩く。
角を曲がった場所まで来て、やっと俺は口を開いた。


「ありがとう、葉月ちゃん」

「いいえー!中々の演技力だったでしょ」


誇らしげな顔を見せる葉月ちゃん。
いや、本当に。


「女優になれると思ったよ、まじで」

「あはは、草野君、褒めすぎ~」


微笑んでから、あやめに視線を寄越す。
あやめは薄らと笑みを浮かべるだけで、何も言わない。


「んじゃ、私は帰るよ?
もういいでしょ?」

「途中まで行かないの?」

「邪魔じゃん!いいっていいって。ごゆっくり~」


葉月ちゃんはニッコリと笑って、前へ出ると手を振る。
それに俺達も手を振った。