「あやめ以外、いらないんだ」



そう言った瞬間、俺の腹に衝撃が走る。
油断してたからそれは思いっきり、俺に“入った”。



「うぐっ、ガハッ、ゴホッ」



殺樹は俺の手を掴んだまま、無表情で俺の腹に何度も何度も足で衝撃を加える。

かかとが、食い込む。
ひゅうっと息を吸い込もうとするが、すぐに殺樹の足が圧し掛かって来る。


苦しい。
どうにか、殺樹の足を止めないと。


空いた手で殺樹の足を掴む。
だけど、それは大した抵抗にはならない。

身体を縮こまらせて、腹に衝撃が来ない様に動く。


それから、暫く殺樹は俺を蹴っていた。


ぐったりとしてる俺を見て、満足そうな声を上げる。


「くくくっ」


くぐもった声で、笑う。
それから、殺樹はゆっくりとしゃがみこみ、俺と目線を合わせてニィっと歯を見せて笑った。


「お前が、勝手にキスなんかしたからだよ?」