「よかったな、本当に」

「…ありがとう、心君」

「まあ、頼るの遅えけどな」

「うん、ごめん。でも」

「あー、いい。わかってるから」


“心君を巻き込みたくなかったんだ”


その言葉を最後まで聞かずに、心君は私の声を遮ると笑う。


「俺が思ってる以上に、あやめって強いよな」

「そんな事ないよ」

「いや、あるよ。俺ならすぐに俺に頼っちゃう」

「……」


それも、絶対ないと思うんだけどな。


自分のコンプレックスを今まで誰にも言わなかった心君。
それだけで、わかるのに。


心君はきっと、一人で解決しようとする人だって。


「ほら、色々あって疲れただろ?
先に寝てろよ。布団敷いてやる」


そう言うと、勝手に押し入れから布団を出してリビングに敷いてくれる。
テキパキと準備をする心君。