「あやめ、姉ちゃんに何かされたらすぐに言えよ?」

「はあ!?しないわよ!」


その息の合ったやり取りに、私は吹き出してしまった。


その日から、私と心君、奈乃香さんの奇妙な同居生活が始まった。



夕食は既に済ませていたらしく、奈乃香さんは残りモノでごめんねって言いながら冷蔵庫から料理を取り出す。
アラビアータ。それと、コンソメスープ。

パスタが好きみたいで、よく作るらしい。


それをテーブルに並べながら、ふっと外を見た。
窓の奥には、まるで全てを飲み込んでしまいそうな程の暗闇がある。


夜が来るのが怖い。
眠るのが怖い。


奈乃香さんや心君に、もしも何かしてしまったらと思うと怖い。


大事だって思う人を身近に置くのが、怖い。


守りたい、守りたい。守らなきゃ。

そう、思うけど。