多重人格者【完結】


「だって、何か言ったら悔しいじゃん。
この感情を劣等感と理解したのだって最近なのに。
あやめとか、カンナに出会って…俺のそんな悩み、どうでもいいやって思ったわけ」

「どうでもって」

「うん、だってどうでもいいよ。
あやめの受けた仕打ちを考えたらどうって事ない。
俺はどんな状況であれ真っ当に愛されてたんだから」

「…っ」


胸が苦しくなる。

私も愛されてはいる。
それはとてつもなく、歪んだ愛情だけど。



「ごめん。嫌な言い方した」

「……」


眉を下げて悲しそうな顔をする心君に、私は首をふるふると振った。


「どんな愛情であれ、受けてはいたな。
…あやめの感情は抜きにして」

「……」

「で?あやめは家に帰らないだろ?」

「……それは」

「姉のとこでいいなら今から電話するけど」

「……それじゃ、お願いします」

「ん」


心君は嬉しそうに微笑むと、携帯を取り出して電話をかけ始めた。