どうして、と問われたら答えられない。

…だけど、なんとなく言わない方がいいと思ったんだ。
本当、なんとなく。

言わないでおこう、そう、頭が指令すると言うか…。
私にも理解出来ないけど、思うんだ。頭がってよりも、脳が?


「後、ちょっとだねー」


ようやく、笑いが収まったのか葉月が言った。
その顔はにやついていたけども。


「うん」

「まー…消極的なあやめに訪れたチャンスなんだから!
連絡先くらいゲットしてよね!」

「…い、いいのかな。聞いても」


不安げに言う私に、葉月は目をまん丸にすると笑い転げた。


「当たり前じゃん。つか、好意なければ誘わなくない?」

「……そうかな」

「そうそう、あやめネガティブだぞ」

「頑張る!!」

「そーだ、その意気だー!」


そうやって励ましてくれる葉月が私は大好きだった。


葉月と友達になったのは、中学の入学式。
同じクラスだった葉月に話しかけられたんだ。

人見知りする私は、周りが知らない人ばかりで不安が全身を包んでいたと思う。
だから、葉月に話しかけられて嬉しいと同時に安心した。



それから中学三年の今も、ずっと同じクラスで仲良しで。
この関係がいつまでも続けばいいのになって思っていた。