多重人格者【完結】



「いきなり抱き上げてごめん。驚いたでしょ」

「……少し」

「だよね。でも、きっとこっちのが早いかなーと思ってさ」

「………」

「何があったかはー…言えるかな」

「………」

「ごめん、俺の勝手な憶測だけど…いい?」


何も言わずにいる私に、草野君はそう控え目に聞いて来る。
どう返答したらいいかわからない私は、口を閉じたまま。


「…親に虐待、されてる?」


ドクンと心臓が鳴る。
家の方から逃げて来たんだ。
言い逃れしようがない。


私の反応を窺う様に顔を覗き込む。
だけど、目を合わせられない私は俯いたまま黙った。


「…もしさ、そうなら…あの家には帰せない」

「え…?」


その言葉の意味を探る様に、私は草野君を見た。
余りにも真剣な表情に息を呑む。


「…どうしても、あやめとあのままってのが納得いかなくて。
俺、さっき家に行こうとしてたんだよ」

「……」


そっか、だからあんな場所にいたんだ。