多重人格者【完結】



「私は、草野君に助けて貰いたいわけじゃない。
…これは私しかきっと解決出来ないんだと思う。
だって、彼女達を生み出したのは私なんだから」

「……その、さ。
すっげえ聞きにくいんだけど…」


歯切れ悪そうに草野君は言葉を濁す。
一呼吸置いてから、意を決したのか草野君は私を真っ直ぐに見て尋ねた。


「…どうしてカンナ達が生まれたんだ?」

「………」


私の手を握る草野君。
真剣な瞳で私を見つめている。


どうして?

……。


「…い、えな…い」


その事を考えるだけで。
思い出そうとするだけで。

胸がどくんどくんと鳴って、苦しくなる。


私は義父の前で平然を装うだけでいっぱいいっぱいだ。


あの事をしっかりと思い出して、ましてや誰かに話すだなんて。

…まだ、出来ない。


「…無理」


震えが、さっきよりも強くなる。