多重人格者【完結】

「さ、行こうか。あやめ」

「……わかりました」

「ん」


ニコニコと私がカバンを持って来るのを待っている草野君。
葉月はファイトだなんてジェスチャーしてるし。

…違うんだって。


憮然としたまま、草野君の前に立った。
相変わらず、笑顔の草野君は私を見てから少し先に歩く。

もう、諦めた私は黙って付いて行く。


「あやめはさ、将来何になりたい?」

「え?」


少し前にいる草野君が急に話しかけてくる。
顔を上げて草野君を見ると、少しだけ顔をこっちに向けていた。


「特には…」

「そっかあ。…俺も。
結構ロクでもないしさ、俺。
重役ついても、部下に裏切られて終わりそーとか、色々思っちゃうんだよね」

「……」