紅い死神は闇を跳ぶ




「するめ足食う?」

シャンがするめの足の入ったプラスチックのケースを投げてよこした。
フタを開けると独特のにおいが鼻をつく。
多少眉をひそめながらも一つの足を取り出し投げ返した。

「ん、うま」

足の一本を噛み千切り租借した。
ヴォルもシャンも好きなものなので家に必ず一ケースはある。

「ヴォル、腹減った」

シャンの腹がぎゅるるる、と鳴った。
ヴォルが帰ってくる前からシャンは腹を空かせてするめ足で気を紛らわしていたらしい。
その証拠にケースギリギリまであったするめ足が残りわずかに減っている。

「はいはい」

立ち上がり、台所へと歩いていく。
壁に引っ掛けてあったエプロンを身に付け、朝食の支度に取り掛かった。