その時、適当に引き出しを漁っていた手に、ふわっとした感触。




これは……熊のぬいぐるみだ。


私は、そっと引き出しの中にある熊のぬいぐるみを見てみる。




男の子だ。


ズボンを穿いて、蝶ネクタイまでつけている。




この事は………秘密にしよう。




「おい前田、ぬいぐるみあったか?」




乱暴な口調で、植松先輩が言った。




「ありません………」


「チッ、役立たずめ」




と言って、植松先輩は床に唾を吐いた。




いい。


別に、アンタらの役になんて、立ちたくない。


むしろ、役立たずで良かった。


皆、死んでしまえばいい。


私も、こいつらも。


死んでしまえばいい。