悲しい。


悲しいけれど、涙は出ない。


だって、俺はマネキンだから。




「わかった、殺してあげる。


でも、どうやって殺せばいい?」




土井が、そう言った。


土井が、俺を殺してくれる。




俺は、素直に嬉しかった。


土井が、俺を殺してくれるって言ってくれているんだぞ?


こんな嬉しいこと、この上ない。




「ニセモノは、しんぞうのあるところをさすと しぬよ」




ホンモノの俺の手を握った冬花ちゃんが、土井にそう言った。




「そっか、ありがとう…とうかちゃん」




そう言って、土井は俺の腕に刺さっていたナイフを何とか抜いて、そして俺の胸の中に入ってきた。




「空峰君…………絆創膏、ありがとうね」


「………ああ」


「空峰君、ニセモノだったけど、嬉しかったよ」


「………ああ」