そんな………山崎君がニセモノなんて………………!!!




泣き喚きながら、「俺を殺せ!」と言う山崎君に対して、桜子ちゃんが、




「あら、そうとも言い切れないわよ。


だって、私もこの屋敷、来たことあるもの」




と言った。




「えっ!?」


「黙っててごめんね、山崎。


私、小学生の頃、ここで肝試ししたことあるわ。


その時は、何もなかったから、今回も何もないんだろうと思って来ちゃったわけだけれど…………。


だから、ニセモノは私かもしれないわ。


…だから、山崎は殺さない。殺せないし、殺させない」


「北出さん……………」


「それより、今まで辛かったでしょう、本当の自分を押し殺して。


ねえ、自分に正直になったらどう?


今までの山崎、やっぱり偽善者っぽくて嫌なのよね。


どこかお堅いっていうか、ヒーロー過ぎるっていうか…………ね?」


「うっ、………うわあああ!!!」




山崎君は、桜子ちゃんに抱きついて、子供のように泣きじゃくった。




どちらかがニセモノかもしれない。


でも、そんなことを忘れさせるような、温かくて、切ないような……そんな光景だった。