風が吹いて
花びらが舞って

蝶が逃げた


ひらひらと
薄く綺麗な翅をはためかせ

軽やかに
青い空に吸い込まれるように

蝶はどこかへ飛んでゆく





お待ちになって

そう訴えかけようとして
やめた



蝶の進行を
防ぐ権利など

一体何にあるのでしょう




気まぐれに止まり
気まぐれに離れる

あぁ
なんて罪な生き物


あんなに美しく
あんなに儚げで

いつだって気まぐれ


ひとつのトコロに
とどまってはくださらない



わたくし達は
追いかけることなど
できないのに


無力なわたくし達に
できるのは

蝶をただ待つことだけ

束の間
蝶の空腹を満たすことが
わたくし達の
せめてもの誇り






ちょうちょう
ちょうちょう





恋い焦がれ
止まってほしさに
わたくし達は今日も


甘い香りを漂わす





end*