いぬのきもち。

マンションに着き、玄関のドアを開けて振り返ると、タロは興味津々といった顔できょろきょろしている。



身体が大きくなって、全く違う風景に見えるんだろうな。




「タロ。早く入って。冷えちゃうよ」


「あ、うん、お邪魔します」


「はは、他人行儀!」


「えへへ」




そのとき、タロのお腹がぐるると鳴った。




「お腹すいてるの?ジャーキー食べる?」




タロの大好きなササミジャーキーを取り出すと。


………タロが変な顔をした。




それで私は気づく。


人間になったんだから、こんなんじゃ足りないよね。




「あ、ごめん。冷凍ピラフあるから、それでいい?」




タロがこくこくと頷いた。


ご飯を食べ終わり、お風呂の時間。




「タロ、一緒に入る?」


「えっ!?」




タロが大きな目をまんまるに見開いてる。




「それはさすがに恥ずかしい…」


「なになに羞恥心なんか覚えちゃって!」




でも、確かに、大人二人じゃ狭いか。


いつもなら一緒に入れるのに。


しょうがない、別々に入るか。