「全く、お母さんたら、彼氏つくれ結婚まだかって、電話のたびに……」



タロに愚痴を聞いてもらおうと地面を見て、私は硬直する。



ーータロがいない!



私が電話をしている間に首輪から首が抜けてしまったらしい。



タロは小柄で、一番細い首輪を使ってもゆるゆるだったから。




「タロ、どこ!?」




私は近所迷惑も顧みず、大声で呼んだ。



でも返事はない。


いつも私が呼ぶとすぐに「わん」と飛んでくるのに。




私は泣きそうになりながら夜の町を探し始めた。




あっという間に一時間近くが経ち、もしかしてこのまま見つからないんじゃ…と涙が滲み始めたとき。




「わっ!?」




私は何かに足をとられ、躓いた。


驚いて視線を落とすと、ゴミ捨て場のゴミ袋に埋もれるように人が転がっていた。




ーーーまさか、死体!?



恐る恐る懐中電灯を当ててみる。




ーーそれは、すやすやと眠っている男の子だった。



たぶん年齢は20歳くらい。