「さあタロ、散歩いこっか♪」



タロにリードをつけ、恒例の夜の散歩に出かける。


ぽつぽつと佇む青白い街灯の夜道は確かに怖いけど、タロと一緒ならどうってことないんだなー。



「寒くなってきたね」

「わんっ」



タロが吠えると白い息が洩れた。

そろそろ冬服買ってあげなきゃ。



その時、ポケットに入れていたスマホが、ちりりんと鳴った。



「はーい、もしもし」

『千尋?たまには連絡しなさいよ!』

「ごめーん」



電話をかけてきたのは、地元のお母さん。

忙しさにかまけて、私からはなかなか連絡しないので、時々たまりかねてお母さんのほうからかけてくるのだ。



『全く…今何してるの?』

「タロとお散歩♡」

『また犬?デートする相手いないの?』

「タロがいれば充分だもん」

『独身女がペット飼いだしたら婚期が遅れるっていうの、本当なのね…』



お母さんが悲しげに溜め息をついた。



『あんたの同級生のサキちゃん、今度結婚するんだってね。ユカちゃんは出産て聞いたわよ』

「田舎は早いからねぇ」

『隣のコウちゃんも大学卒業よ?』

「へえー、あのガキんちょがねぇ」

『それだけあんたも老けたってこと!』

「はいはい、頑張って婚活します!」



私は適当に宣言して電話を切った。