いぬのきもち。

「でも嬉しいな」


「なにが?」


「だって、ちい、俺の名前を愛犬につけてくれたんでしょ?」




私は、子供の頃、お隣に住んでいた可愛いコウちゃんが大のお気に入りで。



よく、「タロ、お散歩だよー」などと犬扱いしては、からかってたのだ。




「ちい、俺のことそんなに好きなんだ」


「……ばか、偶然だよ」


「えー、ほんとかなぁ?」




タロを撫でながらにやりと笑うコウちゃんの顔は……


可愛らしいかった昔の面影はあるものの、何だかやけに大人っぽくて。



心臓が、どくんと跳ねた。




コウちゃんがにっと笑って言う。





「俺ね、ちいのことずっと忘れられなかった。

どうしてもちいに会いたくて、近くに住みたくて……就活も東京でやった。

で、めでたく内定もらったから、会いに来たんだ♡」





私が「うそ!?」と目を瞠ると、コウちゃんが「ほんと♡」と笑う。


次には真剣な顔で私の目をじっと見つめてきた。





「ね、ちい。大好きだよ。

もう一匹のタロも、可愛がってよ」




「………ばか」





私はくすりと笑って、コウちゃんを抱きしめる。




「しょうがない………二匹まとめて面倒みてあげる!」



「やったぁ♡」


「きゅうん!」




あたしの腕の中で天使の笑顔を浮かべる、コウちゃんとタロ。



あぁ、これから忙しい毎日になりそうだ!