ドンッ!! 白い手が、細く長い指が部室の壁を打つ。 「何で一回しかないシンバルのタイミングを外すのよ!?」 形の良い眉を吊り上げて、火野辺(ほのべ)先輩が激昂している。 なのに僕、二年の水岡優貴也(ゆきや)は、先輩の吐く息の香りにうっとりしていた。