「にしても、久しぶりだな」
そう言って私の頭を撫でた慶ちゃん先輩は、私の背後に目を向けた。
と、同時に後悔。
彼氏の目の前で他の男の人に頭撫でられるとか、私は馬鹿か。
慶ちゃん先輩は私の彼、恭也(キョウヤ)くんの親友でもあり、そんな私たちは高校時代に恋愛のもつれがあったりなかったり。
ジャリっと砂を踏む音がして、振り返れば何ともないような顔をした彼がいる。
ほっとしつつ、妬いてくれないのか、とも思う。
複雑な乙女心。
「久しぶりだな。お前、こんな夜中に突っ立ってたら不審者だと勘違いされるぞ」
「そーだけどさ。亜希に久しぶりに会いたかったし。あ、もちろん恭也にも」
「ソーデスカ」
ついでといった風に言われた恭也くんは棒読み。
こういう関係は高校の時から変わらないみたい。
すると、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべた慶ちゃん先輩が、何やら恭也くんの耳元に唇を寄せて囁いていた。
背が高く容姿の整っている2人の姿は絵になっていて、思わず見惚れちゃう。
何言われているんだろうなぁと眺めていたら、急に恭也くんは目を見開いて、勢いよく慶ちゃん先輩のお腹にパンチをお見舞いした。



