深夜12時25分の束縛


「にしても、久しぶりだな」


 そう言って私の頭を撫でた慶ちゃん先輩は、私の背後に目を向けた。


 と、同時に後悔。


 彼氏の目の前で他の男の人に頭撫でられるとか、私は馬鹿か。


 慶ちゃん先輩は私の彼、恭也(キョウヤ)くんの親友でもあり、そんな私たちは高校時代に恋愛のもつれがあったりなかったり。


 ジャリっと砂を踏む音がして、振り返れば何ともないような顔をした彼がいる。


 ほっとしつつ、妬いてくれないのか、とも思う。


 複雑な乙女心。


「久しぶりだな。お前、こんな夜中に突っ立ってたら不審者だと勘違いされるぞ」


「そーだけどさ。亜希に久しぶりに会いたかったし。あ、もちろん恭也にも」


「ソーデスカ」


 ついでといった風に言われた恭也くんは棒読み。


 こういう関係は高校の時から変わらないみたい。


 すると、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべた慶ちゃん先輩が、何やら恭也くんの耳元に唇を寄せて囁いていた。


 背が高く容姿の整っている2人の姿は絵になっていて、思わず見惚れちゃう。


 何言われているんだろうなぁと眺めていたら、急に恭也くんは目を見開いて、勢いよく慶ちゃん先輩のお腹にパンチをお見舞いした。