送信から僅か1分、暗がりから突然現れた人影。
「よお」という低い声が、誰のものかはすぐに気づいた。
じんわりと心が温かくなっていく。
電信柱の影から姿を見せたのは、慶(ケイ)ちゃん先輩。
私がさっきメッセージを送った本人だ。
嬉しくなって駆け寄れば、お酒が抜けきっていない身体がぐらりと前に傾く。
「相変わらずそそっかしいな、亜希(アキ)ちゃんは」
慶ちゃん先輩の逞しい腕で受け止められ、間一髪、顔面から転ぶのは避けられた。
「ごめんごめん。というか、会えるなら言ってください!」
そう言うと、慶ちゃん先輩は悪戯っ子のような笑みを浮かべて「驚かせたかったんだよ」と言った。
この様子じゃさっき送ったメッセージは見てないみたい。
結構変な内容のものを送ったんだけど、反応は見る限り普通だもん。



