深夜12時25分の束縛


 拳がお腹にめり込む鈍い音、盛大に咽た慶ちゃん先輩。


 内心で「ドンマイ」と思った。


 恭也くん、滅多に怒らないのにね。


 本気パンチしちゃうくらいの余計なことを、慶ちゃん先輩がまた言ったんだろうな。


 自業自得だけど、膝に手をついて苦しそうに咳をするから、少し同情。


 背中を擦ってあげようと手を伸ばせば、そこに触れる前に手を取られた。


 ……恭也くんに。


「寒いし帰る」


 低いトーンで言い放った恭也くんに、手首を引かれる。


「ちょっ、慶ちゃん先輩はっ?」


「ほっとけ」


 大きな広い背中の恭也くん。


 そこから感情は読み取れない。


 振り返って慶ちゃん先輩の方を見れば、シタリ顔。


 おまけに、『ガ・ン・バ・レ』なんて口パクで言われた。


 訳が分からないまま、「また会おうねー!」と声を張り上げれば、吹き出すような笑い声が聞こえた。