絶対零度の鍵

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そよそよと、夏真っ盛りには似つかわしくない涼しげな風が髪を揺らす。


予備校の休憩時間と合わせると3個目のおにぎりを、袋から取り出して口に頬張る。


ペットボトルのミネラルウォーターで、それを流し込むとぷはっと息を吐いた。



家に帰る途中にあるこの公園は、少し大きい。


木がたくさん生い茂っていて、春には牡丹や芍薬が花壇を彩る。


今は鈴蘭が顔を出している。


犬の散歩コースにもなっていて、朝夕は犬同士が挨拶したり吠えあっている場面をよく見かける。


秋には木々の紅葉があって、冬には銀杏がびっくりするくらい綺麗に黄色に染まる。


そして、その真ん中にあるこの小山は、ただ単に山を公園に開拓する際の名残なのでは、と僕は勝手に思っている。


小山と言ってもてっぺんは意外に高い位置にあって、立つと公園全体が一望できて気持ちが良かった。


僕は、尭のことを予定通りに撒いて、ひとりでこの場所にやってこれたことに軽い満足感を覚えていた。


口うるさいこと言われるのは嫌だし。一応あいつも女だから、この時間にこんな山、こないだろうし。


もう一度コクリと喉を鳴らしつつ、水を飲んでから、空を見上げた。