絶対零度の鍵

グラっと右京がバランスを崩したと思ったら、強風が僕の背中を押すように飛ばした。



「わわ…」


「右京!!!」



反対に、右京は逆へと押しやられるので、掴んだお互いの手が徐々に剥がされていく。




「クミ!!」



心配そうに右京が僕の名前を呼ぶ。



「右京」



掴んでいるのは、最早指先だけだ。




「君は、僕にとって、ヒーローみたいなもんだ」



僕は強い風に抵抗しながら少しだけ、笑う。


右京はといえば、突然何を言い出すのかと思っているのだろう、戸惑った顔をしている。




「僕は、弱いし、力も無い…ましてや守りたいものなんて、なかったけど…っ、君には」




絡められた指と指が、離れた。




「笑ってて欲しい」



僕は日本人だし。


右京は僕よりずっと力があるし。


だから。


君のヒーローになりたいなんてことは口が裂けても言えない。


根拠もないし、自信も無い。


そんな恥ずかしいことは言えない。



これが精一杯だ。



でも、それで満足だ。