「なんで、猫の姿なわけ?」
右京が馬鹿にしたように訊くと、鍵師は傍にやってきて、フンと鼻を鳴らした。
「小さくて隠れやすいからじゃ」
それ、そんな堂々と言うことじゃないのに。
と、僕は思うけれど、やっぱり口には出さない。
「で、どういうこと?完全なメリットじゃないって…」
今の問題はこっちだ。
「新しい温度師は、温度師によって指名されることは知っているだろう?」
鍵師は碧色の瞳をきらりと光らせて、僕、右京、左京の順に見回す。
僕の後ろでは、尭と溝端が「なんで猫がしゃべってるんだろう」とひそひそ話しているのが聞こえるが、説明している暇はなさそうなので無視することに決めた。
「だが、蓮貴が指名しないまま消えたせいで、今その制度はなくなっておる。」
だから、と鍵師が続ける。
「世界が揺らぎやすくなる。今回分かったように、本当の温度師との力量の差がかなりあるからだ。」


