絶対零度の鍵

ひとしきり迷った挙句。



「翠、ごめん。」


そこには居ない彼女に一応謝罪してから、僕は封筒の中から折りたたまれた用紙を出した。



とても薄い、紙だった。


残念なことにこれをなんというのか僕にはわからないけれど。





「ええと…」




僕は丁寧に書かれた翠の文字を、さっきの変な本と比べて、何て読み易いんだろうと感動する。




「これ…」



文章は、短いもので。




けれど、僕はこれを蓮貴にどうしても渡す必要があるということを悟った。




「行かないと」



慌てて立ち上がり、部屋を出ようとし、異変に気付く。




文を掴んだまま、僕はたじろいだ。



背筋を、冷たいものが伝う。




―花が。



蓮貴の部屋に咲く、一輪の白い花が。





「―燃えてる」




静かに。



一筋の煙と炎を纏って。




少しずつ、白い花弁が失われていっていた。