絶対零度の鍵

確かに僕がさっきこの部屋に居た時にあった筈の、濃紺の書物がなくなっていた。




「くっそぉ…」



悔しさの余り舌打ちする。



きっと、稽古場に向かう途中で蓮貴が立ち寄ったに違いない。


多分、もう、戻れないから。




「友達より、本かよ!」



自棄になりながらも、蓮貴らしいなと感じて、自然と笑えた。




「あーあ」



そのままゴロンと仰向けになって、天井を見上げる。




呆気ないもんだな。


別れ、なんて。



僕、これからどうすればいいんだよ。



蓮貴が居なくなった、この村で。



記憶もないのに。





「旅に、でるかぁー」