絶対零度の鍵

二人の後ろ姿を、雪が所々隠す。



表面では余り感情を出さない蓮貴が、天気に心を映すことを僕は知っていた。


無表情に見える彼の内奥もまた、この雪と同じように震えているに違いない。





これが、蓮貴が言っていた『突然』なのか、と今更ながらに思い知る。



僕は放心しきって、ふらふらと廊下に上った。



これで、終わるわけがない。



心のどこかで、淡い期待を持っている自分が居る。



だから、稽古場に向きかけた足を途中で止めて、蓮貴の部屋で待っていようと決めた。



悪足掻きだ。


意地っ張りだな、と自分でも少し呆れる。



だけど、蓮貴が、僕に何も言わずにいなくなるわけがないと思いたかった。




こんなことになるなら、一緒に朝出かければ良かった。



後悔の念が押し寄せる中、障子を開けると。





「……ない」