絶対零度の鍵

『どうして?』



と訊ねた僕に、蓮貴は、



『村全体が見えるのに、村から俺は見えないから。』



と答えた。



『もしも、自分が次代の任命の為に星を降らす時には、こっそりとこの裏山に戻ってきてしようかな。』




毎日飽きもせず、暮れる夕陽を見つめながら蓮貴が言うから。





『じゃ、その時の為に、僕はこの木にでもメッセージを彫っておこうかな』





すぐ近くにあった、一際大きな木の幹に手を当てて僕はそう言った。



そんな会話をしてからというもの、天気の変動に村全体がおろおろする度、僕はまた蓮貴の悪戯か、と笑っていた。




だけど―




「今日のはなんだか…」




柱に手を掛けながら、静かに降る雨を見て胸が締め付けられるようだった。




「…泣いてるみたいだ…」




何か、あったのかな。

帰ってきたら、慰めてやらなくちゃな―。


そう思って、門の方へ出迎えてやろうかと足を向けた。