絶対零度の鍵

「…いや、こいって言われても…」



見れば分かるだろうが、淳の立っている所は城壁であって、城ではない。


かなり太い城壁で、幅は3m位はあるかと思われるが、ぎりぎり端から飛んだとしても、城まで届くわけがない。


さっきの詩尉とかいう男のように並外れた力と運動能力がない限り、城に飛び移るなんて不可能だ。



喉がひりついて大きな声が出そうになかった淳は、ジェスチャーでなんとかそれを伝えようと、自分の下と城を交互に指差し、老人に向かって腕を交差させた。



×印っていうのは、この世界も共通なんだろうか。


一瞬そんなことが頭を過ぎったが、取り越し苦労だったようで、老人はにこりと頷いた。


城の反対側上方では、闘いの音が今も響いている。


淳は暫くここで様子を見ていようと決め、再度座ろうとした。



が。



「は?」



納得したはずのじーさんが、人差し指で城壁と自分の前の場所までをなぞるようにして、淳に手招いたのだ。



「だから、無理だって…」



×が通じなかったんだろうか。


声を張り上げるのは嫌だったが、ここは無理です!と叫ぶべきだろうか。



判断に迷っていると、おもむろに老人が姿を消す。




「なんだ?」




一体全体老人が何をしたいのかがわからない。

淳は眉を顰める。