絶対零度の鍵

 
淳はこっそりと木陰から顔を出して、テラスに肘をついて空を見上げる家来を見てみることにした。



陽の光が眩しくてよくは見えないが、シルエットだけでも、細身でかなりの長身であることが見て取れる。




「詩尉様!王様がお呼びです!」




「…今、行きます。」



詩尉と呼ばれた男は、ややうんざりしたような声で返事をすると、名残惜しそうに手すりを撫で、身を翻して居なくなった。





「なんだぁ?」



人気がなくなったのを確認しながら、淳は城の庭に足を踏み入れる。




「とりあえず…右京ちゃんや田中は近くにはいなさそうだな。」



嘘みたいな話だが、あらゆる点を総合的に考えてみるなら、卓を信じるしかなさそーだな、と淳は結論付けた。





自分はさっきまで居た所とは別の場所に飛ばされたらしい。


そして、この暑さから考えるに、ここは灼熱の国の方だろう。



それから、さっきの会話。




温度師が居なくなった、とは。




いつの話のことだろう。



今か?



面白半分に聞いていた卓の話によれば、現在の温度師は死んだことになっていた。


そのことは周知の事実のはずだ。



と、すれば―。