「とにかく急いでください!ついてくればわかりますから!」
なんなんだ、と内心少しだけ不服に思いながらも、急かされるまま着替えを済ませ翠の後に付いて、部屋を出た。
瞬間。
「さ、さむっ!!!!!!」
余りの寒暖の差に、尭は身を縮こませる。
翠の家は日本家屋に近い造りで、廊下は庭に面している。
つまり、部屋から出れば、外というわけだ。
それにしたって、余りに寒かった。
部屋の中が春なら、廊下は真冬、しかも雪が降ってもおかしくない様な寒さだった。
その上、陽はまだ昇っていない。
「わかってくれましたか?」
翠もその白い肌を赤くさせながら、尭を見る。
「部屋の中は優柔不断な外気に左右されないよう、簡単な術がかけてあるんです。だから、いつでも快適な温度が保たれるんですよ。」
そう言って、翠はすたすたと門の方へと歩き出す。
その姿を追い掛ける前に、一度だけ空を仰ぎ、尭は思う。
ここに居る者達は、普通の人間に見えたけど、やっぱり普通じゃないんだわ、と。


