絶対零度の鍵

老人はにこにこと頷き、



「何、狭い所でさぁ、大したことはできないが、好きに使われてくだせぇ。」



翠の頭にぽんぽんと手を置く。



「じゃあ、ちょいと碧さんに食べ物をもらってくるでのぉ」



「はい!!今日はじじさまの好きな蜜草の煮浸しがありましたよ!」



「おぉ、それは楽しみじゃぁ―」



そう言うと、老人は相変わらず笑顔のまま、通り過ぎていった。



「翠の家族は知らない者を珍しがらないの?」




後ろ姿を見送りながら、尭はずっと疑問に感じていることを口にした。


翠もそうだが、翠の両親も、今のじじ様も、尭に対し、余りに無防備に見える。




―もしも、私が危険な犯罪者とかで、悪さをしようとしていたらどうするんだろう。



幾ら仮定の話とはいえ、逆に心配になる。




「そりゃ、珍しいですけど…」



翠はそんな風なことを訊かれると思ってもみなかったというように首を傾げた。




「うちの家族がっていうよりも…この村全体がそうなんだと思います。この村に来る者は家族みたいなものですから。」




そう言った所で、翠が立ち止まる。




「ここです。」