絶対零度の鍵

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翠の部屋は、食事をした所からさらに奥の方にあるらしい。




「離れのちょっと手前なんです。」



廊下を翠の後について歩いていくと、ちょうど向こうから人影が一つこっちに来るのが見える。



「あ、じじ様!」



翠がそう言うと、人影は一瞬立ち止まり、ゆっくりとまた近づいてきた。



「翠か。」



仄かに灯された光の下で、姿を現した人物は、70を過ぎた位の小柄な男だった。



目を細めて翠を見つめる様子が、玖李と似通う所があるように思える。



「じじ様、どうして食事にいらっしゃらなかったのですか?素敵なお客様がいらしたのに。」



翠が軽く口を尖らせて訊くと、老人は視線を尭に向けたので、尭は小さく会釈した。




「ちと、用があってなぁ、今からいくとこだったんさぁ。客人かぁ…」



「尭と言います。暫くご迷惑お掛けします」