絶対零度の鍵

時代劇のセットのような家だった。

比較的裕福であることは、外から見てもわかる。

ただ、ここへ来る時に桁違いに大きな屋敷の前を通ったので、それに比べるなら翠の家は控え目な感じがした。


案内された部屋は座敷で、翠の帰りを待っていたのか、食卓が手付かずになっていた。


その奥に、穏やかに微笑む男の人が座っていた。



「我が家にようこそ。翠の父です。大したものは用意できませんが、良かったら夕食を一緒にどうですか?」


翠が付け加えるようにして、



「お母様のご飯は美味しいですよ!」



と、尭を振り返った。


同時に母親もいそいそと支度を始める。


「あ…っと…。この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません。その…」


これから、少しの間でいいから、ここに留まれるよう、なんとお願いしようか、尭は必死で頭を働かせる。


と。


「翠から話は聞いています。こんな所で良ければ、いつまででも居てやってください。さ、遠慮なさらず座ってください。」



翠の父親が、にこにこと手を差し出して席をすすめる。



どうも、素晴らしく良い家族に出会えたようだ。


「ありがとうございます…」



尭は本心からそう言って、勧められるままに座った。