絶対零度の鍵

そんな蓮貴の態度に僕はにやにやしながら、彼の傍に駆け寄り肩肘で小突く。



「翠も、その花持ってってたよ。」



「…そうか。」



「蓮貴が小さい頃よくくれた花だって言ってた」



そこまで言うと、蓮貴が立ち止まって僕をジロリと睨む。



「…何さ」



顔の筋肉が緩んだままの僕は少しの抵抗を試みる。



そんな僕を暫く見つめていた蓮貴は、やがて大きく溜め息を吐いた。




「なんか…星は段々図々しくなるな。」




諦めたように呟いて、また歩き出す。




「ちょ、それどーいう意味だよー」



僕はまだへらへらと笑いながら、蓮貴の後を追い掛けた。




時経つにつれ、蓮貴と僕の間に他人行儀みたいなものはなくなっていて、まるで古くからの友人のように、お互いに気を許しあっていた。



いや、僕の方がやや一方的に蓮貴になれなれしくなっていって、蓮貴がそれに仕方なく付き合ってくれていると言った方が真実により近いとは思うが。


蓮貴は思ったよりもずっと、根の優しい青年だった。