絶対零度の鍵

「失敬な奴だな。人の腕を殴っておいて。」




少し口を尖らせて蓮貴が言う。




「いや、そんな所に居るとは思わなかったから…」




言いながら、僕は身を起こし、蓮貴の広げている本に目をやる。


瞬間、パタンと閉じられた本の装丁は濃紺だった。




「それ、何の本?」



「図鑑。」



短く答えて、蓮貴は大きな布に手早くそれを包んだ。




「ここで、何をしていた?」



「えっと、、なんだっけ…そうそう、自分が倒れていた場所に行ってみたら何か思い出せるかと思ってきたんだった…」




今更ながらに思い出した目的の、ひとつとして遂げられていない事に気付き愕然とする。




「で、何か、思い出せたのか?」



容赦ない蓮貴の質問に、僕はがっくりと項垂れた。



「何も…っていうか、翠が来たから…」