絶対零度の鍵

「うーん…私にとって、蓮貴が温度師か温度師じゃないかっていうのは、関係ないの。温度師を知りたかったのは蓮貴がそうだからであって、蓮貴じゃなかったら、どうでも良かったわ。」



ふふと笑う翠は、正直に言っていいならば、やっぱりかわいかった。


あー、翠は蓮貴のことが好きなんだな、と思った。


そして、恐らく蓮貴も。



「この花ね、小さい頃、蓮貴が私の頭によく挿してくれたの。」



手折った花の香りを吸い込みながら、翠が懐かしむように言った。



「あの頃に戻れたらな…」



叶うことのない呟きは儚く消える。



「蓮貴が温度師になったら、翠はどうするの?」



「どうって…どうもしないわよ。」



ふと浮かんだ疑問に、翠は諦めているかのように答えた。




「ただ、元気にしてくれていれば、それで…」



一瞬俯きかけた翠が、はっとしたように口に掌を当てる。



「っといけない!畑を手伝ってこなくちゃ。星、またね!」



慌てて立ち上がると、飛ぶように去っていった。