絶対零度の鍵

「ある日…って?」



肩を落とした翠に訊ねると、翠は笑みを崩さないまま、ふっと息を吐く。



「温度師について、色々訊ねたことがあって…でも怒られちゃってね…それからかな、蓮貴がよそよそしくなったの。」



「温度師の村なのに、温度師のことを知らないの?」



つい、訊いてしまって、すぐにしまった、と思った。



「…そう、笑えるでしょ?」



翠の顔が、暗くなったからだ。



「温度師になるのは、男なの、ずっと。女はほとんど力を持たない。だから、温度師の母にでもならない限りは知ることはないの。」



「でも、前の代の温度師のお母さんとかに訊けば教えてくれるんじゃない?」



また、失敗したらしい。



今度は翠がちょっと馬鹿にしたように笑ったからだ。




「温度師の世代交代は千年に一度よ。ここに居る人間の寿命は短い。生きてやしないわ。それに…皆余り話したがらないの。」




プチ、と小さな音がして、水が花の茎を手折った。



「結局、蓮貴からも、何も教えてもらえなかった…」