絶対零度の鍵

そのまま無言で進んでいくと、大きい部屋がひとつ、障子が開け放された状態で広がっていた。


無数の書物と、大きな机と細かい筆がいくつか使いかけたままにしてあったが、それを気にさせない桁違いな広さだった。



脇を通り過ぎる際、必然的に足が止まると、蓮貴も立ち止まって僕を振り返った。




「珍しいか?」



「あ、いえ…」



なんとなく、人の部屋を覗くというのは罰が悪いように思えて、恐縮してしまう。



「俺の部屋だ。」




慌てて目を逸らした僕に、蓮貴は咎める様子もなく教えてくれる。




「帰ったら家を案内しよう。」



蓮貴はそう言って、また歩を進めた。



慌てて僕はその後を追う。



部屋の隅に置かれていた一輪挿しに挿された白い花が、何故か無性に気になったが、やがて見えてきた門の外に出た頃には、すっかり忘れてしまっていた。