絶対零度の鍵

蓮貴の家の廊下はどこまで続くのかと思うほど長く、途中部屋は数え切れないほどあった。


中庭も、僕の部屋の前だけではなく、所々に幾つかあって、一際広く思える庭には池もあった。



ただ、全体的に人気はなく、ひっそりとしている。



その癖、手入れは丹念にされているため、塵ひとつ落ちてはいない。



玄と呼ばれた老婆を初め、この家に仕えている者が多い証拠だろう。



なのに、気配を殺しているかのように思える程、静かだった。



この相反する空気が、どことなく僕を落ち着かなくさせた。



足音を立てない蓮貴の歩き方も、僕のそんな気持ちに拍車をかける。



僕一人の足音と、風の音しか、この邸宅には物音の存在がないようだった。





「…静か、ですね。」





たまらず、僕が蓮貴の後ろ姿に声を掛けると、蓮貴は振り向く事無く答える。





「いつものことだ。」



会話が続く期待を粉砕する、素っ気ない返答に僕はこっそりと落ち込む。