絶対零度の鍵


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「蓮貴さん!」



食事を終えて少し風に当たろうかと部屋を出ると、ちょうど中庭に佇んでいる蓮貴を見つけ、声を掛けた。



新緑を愛でるように、撫でていた蓮貴は、はたと手を止め、こちらを振り向く。




「…蓮貴で良い。随分と顔色が良くなった。」



ふ、と笑んだようにも見える柔らかい表情に、僕は続けて御礼を言うことにした。




「はい!あの…蓮貴…のお陰で命が助かったのだと、、聞きました。本当にありがとうございました!」




深々と頭を下げると、蓮貴が呆れたように息を吐いた音がする。





「玄(げん)か。あの婆さんのおしゃべりにも困ったもんだ。言わなくていいことを…顔を上げろ。」





しまった。



言ってはまずかったのかと、恐る恐る顔を上げる。




「お前は気にしなくて良い。」




予想していたような、怒った顔ではなく、どちらかといえば呆れたような、諦めたような、そんな顔だったので、僕は安堵した。