絶対零度の鍵


球体になっているこの店には、一応裏口なるものがあった。



鍵師がそちらからよく出入りしているのを、右京は何度か見掛けたことがある。


裏口に回ると、案の定テープを剥がしたような後が扉にあった。



つまりはここに貼ってあったというわけだ。



しかし、解せない。




「旅に出るならなんであたしに言わなかったんだろう」




常連の自分に一言くらいあっても良いと思うのだ。



直前のあの時だって、鍵師は出掛ける素振りを少しも見せていなかった。



それどころか。




「次は別件で来るようにって言ってくれてたんだけどなぁ…」




まぁ、まさかものの数分で再来するとは夢にも思わなかっただろうけど。