「絶対零度の鍵と、熱界雷の鍵。各々を十(とお)ずつ使い、雨を降らせると―死の雨となる―」
極寒の国の鍵師が、禁忌を小さく呟く。
それは、恐怖。
「では、我々は何を行えばいいというのか?」
燕軌の問いは、この場に集い合うそれぞれに向けられた。
「…蓮貴との…真っ向勝負、では?」
燕軌の傍らに居る双子の片割れが、やはり控えめな声量で発言した。
「数千年前の温度師の膨大な力を甘く見てはいけない。真っ向勝負なんか挑んだら勝ち目はない。…恐らく先代が行ったように、奴を封印する他、方法はなさそうだ。」
鳳凛が、険しい面持ちで言った。
「正式な温度師でなくても、不在となれば、均衡は揺らぐ。事態は一刻も争うものとなるじゃろう。ワシが言いたかったことは、そのことだけですじゃ。」
そう言うと、碧玉の瞳の鍵師は椅子に座る。
「つまり、、戦が勃発するということですか?」
誰かはわからないが、比較的若い者が、怯えたような声で訊ねた。
その問いに、暗い表情の賢人達は、無言で応える。
隣国は関与せず、統治する場所さえそれぞれ異なるこの変わった世界では、戦なんて言葉は滅多に聞くことはないのだろう。
非常事態宣言。
誰も無傷では済まされない。


